POLYPHONIC CITY

 そもそもリミックス・アルバムとは何のために制作されるのだろうか。より踊れるサウンドにするため? ならばA-beeの作るサウンドは最初からフロア志向だ。お手軽なベスト盤の代わり? だったらA-beeのアルバムはまだ2枚なのだから、両方を聴いてもさして金も時間もかからないはずだ。

 リミックス・アルバムとは、リミックスされる側のアーティストとリミックスする側のアーティストの個性のぶつかり合いがあってこそ初めて意味を持つ。
この「FACE」のように。

 トラック・メーカーであるA-beeとは何者なのだろうか。元気ロケッツへの楽曲提供、Sweet Vacationのリミックス、Aira Mitsukiのプロデュースなどでテクノポップ・シーンにも名を知られるA-bee だが、ファースト・アルバム「FLYING-GO-ROUND」を自身のレーベル・VOOV Recsからリリースしたのは2007年9月のこと。ほんの約2年で頭角を現してきたクリエイターなのだ。

「FLYING-GO-ROUND」は、エレクトロを主軸としながらロックの要素も注入する一方、アコースティック・ギターやウッド・ベース、そしてヴォーカルを効果的に使用している点で今聴いても新鮮だ。Policeの「Don't Stand So Close To Me」も、A-beeの手にかかればハードなエレクトロに変貌してしまっている。

 2008年12月にはセカンド・アルバム「POLYPHONIC CITY」をリリース。ストリングスの音色とサンプリングが響く「ON.set OFF」で幕を開けるこのアルバムは、ellieやKaoriをヴォーカルに迎えた楽曲はよりポップになっているが、「GAME」を筆頭によりアグレッシヴなサウンドも展開している。みずみずしいエレクトロニカの「U」、ラウンジ・サウンドに驚かされる「MAGIC APPLE LOOP」、環境音をスケッチしたかのような「monophonic city」と、サウンドのバラエティが一気に豊かになった。

 そして届けられたのが、リミックス・アルバム「FACE」だ。A-bee自身もブログで「メンツもすごいよ」と書いていたが、まさに気鋭のアーティストたちが顔を揃えている。参加しているのは、ユニコーンや玉置成実のリミックスを手掛けるOddity、DJやトラックメイカー、そしてソロ・シンガーとして活躍する藤澤志保、平井堅や元気ロケッツのリミックスを手掛けるmetalmouse、BENNIE KのプロデュースやSweet Vacationのリミックスなどを手掛ける★STAR GUiTAR、元SBK(スケボーキング)のSHIGEOが率いるモード・エレクトロ・バンドのthe samos。

 それぞれのトラックでA-beeとリミキサーの心地よい衝突が繰り広げられているが、大胆に音数を減らしたOddityによる「LOUDER (Oddity remix)」、楽曲のドラマティックさを強調したかのような藤澤志保による「The Other Side Of The World (Shiho Fujisawa remix)」、アコースティック色の強い静謐なサウンドにしてしまったmetalmouse による「To The Univers (metalmaouse Remix)」が印象的だ。

 さらに、このアルバムの重要なポイントは、A-bee自身が2曲を自分自身でリミックスしている点だ。特に「POLARIS (A-bee Remix)」でのリズムの音色の多彩さと激しさは鮮烈。A-beeの止まらない勢いを雄弁に物語っている。

「FACE」は、A-beeが同時代を生きるトラック・メイカーたちとともに今なお変化と進化を続けることを明快に示したリミック・アルバムなのだ。

宗像明将(ムネカタアキマサ)